人々が自然と集まる場所

  • ローカルライター
  • 渡辺 風香

大津市の比良(ひら)エリアには「オルタナティブ公民館」と呼ばれるパブリックスペース「打明(うちあけ)」があります。「dryriver」というパン屋を営業される傍ら、打明を運営されている干川弦さん。今回は、打明が出来るまでの経緯や、場所に込められた思いなどについて、お話を伺いました。

――― 「比良」エリアとはどのように出会われたんでしょうか?

初めに比良に来たのは、自宅の土地を探していた時です。湖西道路から比良で降りた瞬間に、びわ湖が広がる景色にグッと惹かれて、「あ、地域はもうここやな」と思いましたね。

――― 「打明」として、地域に開いた場を作ろうと思ったきっかけはなんですか?

友人が主催するびわ湖のビーチクリーン活動に参加したことですかね。

他の参加者と話していると、ここにある自然や、地域を大切にしたいと思う人がとても多かったんです。それで、公民館のようなイメージで、地域の人が集まれる場所を作りたいとなんとなく思うようになりました。

しばらくして、今の打明がある場所に出会いました。いくつかある建物を人に貸せば賃貸収益にもなるし、パンを増産してこっちに持って来ればなんとかなるかなと、思い切って購入することにしたんです。

――― 「打明」が出来てから急に人の流れが出来て、いつもその中心に干川さんがいる印象があります。

もともと僕は人と関わることが全然得意じゃないんです(笑)。20代のころは、1人でパソコンに向かって音楽を作っていた人なので。

イベントを通して、地域の人、外部の人が自然に集まって、そこからつながりが出来ている気がします。

イベントで初めて比良に来て、この環境を気に入って通ってくれる人もいます。

だから、僕が意図的に人を集めているというよりは、打明があることで、自然に人の流れができているイメージですね。

――― 干川さん自身は、地域の方たちとのつながりが強い印象もありますが、仲間づくりのコツがあったりするんでしょうか?

僕が始めたわけではないんですが、移住して来て驚いたのは、みんな下の名前で呼び合っていることですかね。友達の奥さんでも、「○○ちゃん」みたいに。

そうすることで、距離感が急に縮まる気がします。そんな感じで、初めから仲良くなりやすい空気感があると思いますね。

――― 干川さんは何と呼ばれていますか??

「ほしかわ」なので、「ほっしー」が多いですかね。実はパン屋の「dryriver」も僕の名前を英語にして「dry(干)river(川)」なんです(笑)

――― なるほど。これから私もほっしーさんと呼ばせていただきます!

改めて「打明」は、どのような場として捉えるといいのでしょうか?

「オルタナティブ公民館」の「オルタナティブ」というのは、「もう一つ別の」というような意味です。

打明を始めるときに「どう呼ぶか」と考えて、地域に開かれた、かつ既存の枠を超えたもう一つ別の新しい感覚で出来たらいいなと思って。

エリアの外の人も、地域の住人もみんながふらっと立ち寄れるような場所にしていきたいと思っています。

具体的には、イベント会場でありながら、パン屋やカフェがこの場にあることが、「オルタナティブ公民館」の考え方を表現している一つです。

これからも、地域のおじいちゃんおばあちゃんまで立ち寄りやすい場所であることで、閉鎖的にならずに、地域の公民館としての役割も担っていく存在になってくれたらいいなと願っています。

―――――――――

今回、干川さんから「もともと人と関わることが得意ではない」という言葉が出てきたことには、とても驚きました。

いつお会いしても朗らかな笑顔で気さくに話しかけてくださり、「人と関わることが好きなんだろうな」という印象さえあったからです。

田舎に移住されたことで、地域の人々と関わることの大切さを感じ、干川さん自身の「人との関わり方」そのものが変化していったのかもしれないと思いました。

そんな干川さんが作り出した「なんとなく人が集まる」「気が付けば仲間が増えていく」という不思議な場に、みなさんもぜひ一度足を運んでみてください。

オルタナティブ公民館「打明」

大津市北比良630−1
[常設店舗dryriver2nd営業時間]
11:30 ~17:00(売り切れ次第終了)
@uchiake_hira/
定休日/日、月
[常設店舗NINA SPICE STAND]

ローカルライター 渡辺 風香

生まれも育ちも大津市北部エリア。両親が経営していた、北比良・オーベルジュメソンを2021年に引き継ぐ。生まれたときから当たり前にあって、気づかなかった地域の魅力を、お客さまや移住してきた人たちに教えてもらうことで、日々再認識している。
結婚を機に、山側の実家から、びわ湖側に引っ越して1年ちょっと。自分が生まれ育ったこの地で、娘が育っていく姿を見るのがこれからの楽しみ。
比良の自然の中を家族とお散歩しながら、くだらない話をする時間を大切にしている。
気軽に会える距離に住む、お友だち&お店のスタッフさん、募集しています。

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  • 渡邉 風香
  • 写真:山崎 純敬
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