比良と出会い繋がる場所 オルタナティブ公民館 打明-UCHIAKE-

  • ローカルライター
  • 西村 清美

「地域に開かれていて、既存の枠を超えたもうひとつ新しい感覚のもの。

比良と重なるところもあり、外部と重なるところもある」

そう語ってくれたのは、比良の大きな食物備蓄倉庫を「オルタナティブ公民館」へと変化させ、そこで「dry river 2ND」という自身の2号店となるパン屋さんを営む干川さん。

干川さんはもともと京都のご出身ですが、浜大津で1号店となる「dry river」を始められてから、滋賀との接点を大きく広げられました。

そんな干川さんが現在に至るまでの流れや想いをお話ししてくださいました。

1号店が軌道に乗り出した頃、2号店となる打明の土地と出逢われました。

売りに出されていた大きな倉庫。この規模の倉庫はもう作れないという話も聞いていたため、眺めも良いこの場所が材木置き場や中古車販売所になるのは味気ないと感じ、打明の構想が始まりました。

湖西にもともと移住されている、京都でバンドをされていた時からのお友達と一緒にビーチクリーン活動に参加し、朝ゴミ拾いしながら、社会の大きい流れや、資本主義の流れ、コロナ禍を乗り越えて感じたいろんな違和感を共有し合いました。

その中で地域、この辺の綺麗な自然・場所をやっぱり大切にしたいというみなさん共通の想いを受け取り、

「公民館的なところでちょっとみんなが集まれるスペースがあればいろんな意味で地域にとって便利かなって。お祭りをすることもできるし、非常事態になった時はもともと食物備蓄倉庫である特徴を活かしてお米の備蓄もできる。避難所にもなる」

と、こうしてオルタナティブ公民館「打明」ができあがりました。

干川さんと比良の出会いは、お家の土地を探しにずっと北上され、湖西道路から比良に降り立ったその時。

ぐわっと琵琶湖を一望できる景色に惹かれて「あ、もう地域はここやな」と即決定。

「何をやるにも美しいものが好き」と語る干川さん。

今までの人生で自分の軸となった音楽やパンは作品になるし、この地域の自然もほんとうに美しいから好き。

その想いの先には「美しいがあるところには嘘がない」という信念がありました。

「結局全部フィクションというか、経済もお金も人間が創造したシステムが全部フィクションやなっていうのを常々思ってて、誰かの手によって創り出されたもので溢れる世の中で唯一、美しい自然を見た時にハッとする感覚ぐらいしか、自分にこれは嘘じゃないって言えることってないんじゃないのかなって」

大阪や京都、外に住んでいる人たちがここに来て、景色を見てもらう、それだけでもいいから多くの方にこの美しさを感じてもらいたいんだと比良の魅力を熱く語られていました。

干川さんだけでなく、地域の方達など、たくさんの人の想いが詰まった打明。

今、打明では定期的にイベントが行われていたり、干川さんが営むパン屋さん「dry river 2ND」や、「NINA SPICE STAND」というお店が併設され、賑わっています。

そして今後は、ガーデンを作ったり、売りスペースを作ってワークショップができるようにしたり、ポップアップでお店に入ってもらうようなこともしていきたい、と心が躍るたくさんの展望を語ってくださいました。

お話を伺い、その瞬間、瞬間を大切にされている干川さんを知ることができた今回のインタビューはとても充実した時間となり、干川さんを取り巻く環境の一部に参加してみたいと強く感じました。

多くの人と出会い、そしてつながり、そこでできた流れに乗って生きられている干川さんを中心にひろがる「オルタナティブ公民館 打明-UCHIAKE-」は、比良とも、外とも出会い、つながる場所となり、地域にとって新しく大きな存在へと変化していきそうです。

オルタナティブ公民館「打明」

大津市北比良630−1
[常設店舗dryriver2nd営業時間]
11:30 ~17:00(売り切れ次第終了)
@uchiake_hira/
定休日/日、月
[常設店舗NINA SPICE STAND]

ローカルライター 西村 清美

京都府京都市出身、在住。成安造形大学出身。大阪で就職した後、現在はフリーのデザイナーとして新たな道を歩み始めている。
湖西は祖母と親戚が在住しているため、よく遊びに行き、学生時代を過ごした第2の故郷。
湖西線の電車から見えるびわ湖がいろんな思い出を連れてきてくれるので、乗っている時間が好き。
誰かを助けられるような「なんでもデザイナー」を目指して、いろんなことを絶賛吸収中。

  • この記事を書いた人
  •  
  • 文 :
  • 西村 清美
  • 写真 山本 桜・山崎 純敬