地域の子どもたちの居場所づくり

  • 冒険遊び場小松プレーパークをつくる会「駄菓子屋 一番星」
  • 塩見久恵さん、安藤知佳さん

小さい頃、100円玉を握りしめて走った駄菓子屋さん。フーセンガムにソースせんべい、きな こ飴、ラムネにライスチョコ、粉末ジュース、グミやリングキャンディ…。そこには子どもたち のワクワク感と熱気で満ちあふれていました。 

ただお菓子を買って食べるだけじゃなくて、店番のおばちゃんや友達と気さくに話せるコミュ ニケーションの場。そんな子どもたちの居場所をつくりたいと、お寺で駄菓子屋さんを始めた のは地域のお母さんたちです。 

なぜ今あえて駄菓子屋を?しかもお寺で? 週1回、大津市南小松の徳浄寺で開催されている 「駄菓子屋 一番星」にお邪魔し、主催者である塩見さんと安藤さんに話を聞いてきました。 

駄菓子屋は、大人にとっての居酒屋のような存在?!

—–– 今は大きなショッピングセンターに駄菓子屋さんが入っているのを見かけますが、“お 寺で駄菓子屋さん”というのは珍しいですね。 

塩見(敬称略):今って、子どもが自分の意思だけで行ける場所があまりにも少ないと思うん です。小学校低学年だと基本的に親がついて行きますし、ワークショップなどでも事前予約が 必要です。だから「親の介入なしに、子どもが自由に来られる場所をつくりたい」という思い で駄菓子屋を始めました。駄菓子屋って夢があるじゃないですか。 

—–– たしかに!駄菓子屋だったら子どもたちが集まりそうですね。この活動を始められたの はいつからですか? 

塩見:駄菓子屋をオープンしたのは2017年の10月です。その前の活動からお話すると、最初は 地域のいくつかの家族と自主保育のグループを作っていました。でも子どもたちが大きくなっ てきて自主保育では合わなくなってきた頃に、友人からプレーパークというのを聞いて、そっ ちをやってみようということになったんです。プレーパークはもともとヨーロッパで生まれた もので、子どもたちが想像力で工夫して遊びを作り出すことができる場所のこと。日本語では 「冒険遊び場」とも呼ばれています。 

安藤:小松プレーパークは月1回の開催で、子どもの居場所としては頻度が少ないかなと思って いました。そこで子どもたちがもう少し頻繁に集まれる場所をつくろうと、駄菓子屋をするこ とにしたんです。別に駄菓子を食べてほしいというわけではなくて(笑)、学校と家庭以外の 居場所づくりですね。大人もそうですが、子どもだって自分で選んで行ける場所があると楽し みが増えますよね。

塩見:そうそう。だからわかりやすく説明すると、この駄菓子屋は「大人の居酒屋」のような 存在。職場から家に帰るまでのちょっとした寄り道と同じなんです。 

子どもとのゆるやかな関係性が、心地よい居場所に

—–– 駄菓子屋の場所をお寺にしたのはなぜだったんですか? 

塩見:私たちはプレーパークを始めた半年後から、子ども食堂もスタートしました。プレー パークはお昼をはさんで行うので、それなら一緒にご飯を食べようということで。すると、地 域の民生委員の方たちが子ども食堂に興味を持たれて、民生委員の会議に呼んでくださったん です。そこで出会ったのが、民生委員もされているこちらのごえんさん(ご住職)でした。そ の時に真剣に話を聞いてくださって、この方なら力を貸してくれるかも!と期待しました (笑)。 

—–– なるほど。それで実際に場所を貸してもらえることになったんですね。 

安藤:そうなんです。もともとお寺は地域コミュニティの一つということで理解を示してくだ さいました。ごえんさんや門徒さんのご厚意でお寺を開放していただけることになったので、 すごく感謝しています。開催日に立てられる駄菓子屋ののぼり旗も、ごえんさんが用意してく ださったんですよ。 

※徳浄寺 ご住職のお話はこちら(記事はこちら)

—–– 駄菓子屋をオープンして、子どもたちの反応はどうでしたか? 

塩見:最初からこんな感じで賑やかです。とても自然に受け入れていたように思いますね。子 どもたちと「今日どうだった?」みたいな話ができると思っていたら、想像以上にたくさん来 てくれるから、とりあえず駄菓子のお金の計算に忙しい(笑)。 

安藤:多い時は入れ替わり立ち替わり約60人の子どもたちが放課後に集まります。ちょっとグ チってみたり、騒いでみたり、たまにそっと横に座っているだけの時もあったり、様子はいろ いろですね。もう3年くらい続けているので、常連の子もいます。高学年や中学生の子とは「好 きな子できたんか?」みたいな恋バナもしますよ。 

—–– へえ~、それってすごい信頼関係ですね。 

塩見:私たちは先生じゃないし、家族でもない。利害関係のない、ただのおばさんと子どもと の関係。そういうゆるやかなつながりだからいいんでしょうね。

同じ価値観を持った仲間との出会いが、大きな財産 

—–– ところで、お二人は移住者だとお聞きしました。湖西に移住されて良かったことはあり ますか? 

塩見:私の出身は山口県で、一人目を出産した頃は京都に住んでいました。でももっと自然豊 かなところで子育てしたいと思って来てみたら、人がすごくいい。このあたりには陶芸家や木 工作家さんなど作家活動されている方も多いですし、いろんな人と関われるのが面白いです ね。 

安藤:ほんとにそう。自主保育やプレーパーク、そして駄菓子屋を一緒にやる仲間ができたこ とも大きな財産。私は愛知出身で、大阪に5年ほど住んでからこちらに移住したんですけど、愛 知の友達に話すと、「よくそんな仲間ができたね」って驚かれるんです。「自主保育をしてみ たい、プレーパークをしたい」っていう相談を受けることもありますが、やっぱり同じ価値観 を持った仲間づくりが一番難しいみたいですね。

塩見:でも駄菓子屋の運営は簡単なので、ぜひ他の地域でもやってほしいです。週1回、2時間 だったらそんなに負担はありません。私たちもそれぞれ仕事や家庭のバランスを取りながら活 動していますし、各学区に一つずつこういう居場所があるといいなと思いますね。 

—–– 湖西にはお寺も多いですから、居場所づくりの活動が広がっていくといいですね。小松 プレーパークをつくる会では、今後やっていきたいことはありますか? 

安藤:今来てくれている子たちが将来何か悩んだ時に、チラッとでも「あのおばちゃんに話し てみようかな」と思ってもらえるような「場」になれたらいいなって。だからこれからも続け ていきたいと思っています。 

塩見:子どもから高齢の方まで誰もがホッとできるような「場」をつくりたいです。実は馬を 飼いたいなんて夢も♪ まだ具体的に案があるわけではないのですが、一緒にいてくれる人たち と面白いことがしたいですね。 

冒険遊び場小松プレーパークをつくる会

小松プレーパーク
開催日:毎月第一日曜日
場所:南小松の八幡神社前・コミュニティ広場

Facebook「小松プレーパーク」

子ども食堂 ぱっぱ屋
小松プレーパークと同日・同会場で開催
料金:子ども無料/大人300円からのカンパ制
Facebook「子ども食堂 ぱっぱ屋」
駄菓子屋 一番星
開店日:週1回15:00~17:00 詳しくは駄菓子屋一番星のInstagramに掲載 場所:南小松 徳浄寺
Instagram https://www.instagram.com/dagashiya1banboshi/