ものづくりも暮らしも実り豊かに。

  • イズミさん一家

湖西エリアには、木工、陶器、ガラス、絵画といったものづくりをする人たちのアトリエや工房が多く点在しています。山と琵琶湖に挟まれた自然豊かな環境で、自由な発想や創造力が高まるからでしょうか。

ガラス作家のイズミさんもその一人です。撮影中、作業風景を見せていただくと、バーナーの炎とガラスの色彩の美しさに一同うっとり。都会の喧噪から離れ、ものづくりに没頭できる環境だからこそ、新しいインスピレーションも湧くのかもしれません。

また湖西エリアはファミリー層の移住者も増えており、子育てするのにも恵まれた環境。そこで、ものづくりと子育てを両立しながら楽しむイズミさんご一家に、湖西での暮らしの魅力を聞いてきました。

昔から好きだったガラスを仕事にしたいと決意

—–– まずはアキさんのガラス作家としての活動についてお伺いできますか。

アキ:ガラスというと一般的には吹きガラスをイメージされると思いますが、私がやっているのは「バーナーワーク」というジャンルです。これはバーナーの炎によってガラスを溶かして成形するものです。バーナーワークで作れるものとしては、とんぼ玉やガラスの人形などがよく知られていて、私はペンダントなどのアクセサリーや小さなオブジェを作っています。

—–– そもそもバーナーワークに出会ったきっかけは何だったんですか?

アキ:昔から石やガラスの透明感に惹かれるところがあったんです。学生時代にはお店や展示会に足を運んで、古いものから新しいものまで多種多様なガラスを見ていました。そういったことを積み重ねていくうちにバーナーワークで作られたガラス作品たちと出会いました。

—–– そこからアキさんが制作するようになった経緯は?

アキ:バーナーワークに出会ってから他のことをしていた時期もありますが、自分もやってみようという決意をして大阪から京都へ引っ越しました。京都では手づくり市に出展したり、そこで出会ったお客様の紹介から百貨店の催事や美術関連の企画にお声がけいただいたりしていました。

また国内での個展やグループ展も頻繁に行っていましたね。京都市内でとても充実した日々を過ごし、気づけばガラスを始めて10年近く経っていました。

日々の暮らしを大事にしたい

—–– 京都から湖西に移住されたのはいつですか?

アキ:2015年ですね。結婚を機に今後の住まいを考え始め、最初は京都の北区や大原で探していました。そんな時、不動産屋さんから「滋賀の別荘地もあるよ」と教えてもらったのがこの場所です。車で向かってバイパスから見えた琵琶湖の景色に、2人とも一目惚れのように気に入ったんです。

—–– 奥さんも田舎暮らしに賛成だったんですか?

ウメ:むしろ私のほうが田舎暮らししたい気持ちが強かったんじゃないかな(笑)。夫は都会で育っていますけど、私は田舎で生まれ育ったので、街暮らしより田舎暮らしのほうが落ち着きます。独身の頃、ワンルームマンションに住んでいると、常に仮住まいみたいな感じがしていました。

—–– ああ、その感覚はわかります。この場所を選んだ決め手はありますか?

ウメ:ここは2人ともすごく気に入って、すぐに決めました。初めてこのエリアを紹介してもらった時に、偶然「かんじる比良」というイベントが行われていて、人がたくさん集まって明るい雰囲気で、ものづくりをしている人が多くいたのも魅力的に感じました。それと緑が多くてとても心地よかったのを覚えています。

—–– 5年ほど住まれて、現在の暮らしはいかがですか?

ウメ:とっても居心地いいですね。窓から山を見てはホッとして、外に出たら琵琶湖が見えて深呼吸。生活のところどころにふっと心地よい時間がちりばめられているような、そんな感じです。以前京都に住んでいた頃は、仕事中心の生活で便利だったことに甘えて暮らしをおろそかにしていたように思います。今は便利な生活からは離れ自分たちでやらなければならないことがずいぶんと増えましたが、自分でできることが増えていくというのも楽しいですね。

—–– 例えばどんなことを楽しまれていますか?

ウメ:シェアファームで野菜作りをさせてもらったのですが、その野菜のおいしいこと!子供もキュウリをおやつがわりにぼりぼり食べて、今まで食べられなかったトマトも大好きになって。今は庭にも小さい畑スペースを作って楽しんでいます。

そして、湖西エリアの同世代の友人たちとのつながりもできてきて、味噌づくりやへしこづくりを教わったり、藁でほうきづくりやしめ縄づくりを教わったり、家族ぐるみで餅つきをしたり、自然な暮らしを楽しんでいる同世代が身近にたくさんいることがとてもありがたく、学びが多い毎日です。「日々の暮らしを大事にしたい」と思いながら今までなかなかできなかったことが、少しずつできてきているかなあって思います。

—–– 豊かな暮らしですよね。子育てをする環境としてはどうですか?

ウメ:子育てもこの土地でできてよかったなって思います。我が子は赤ちゃんの頃から琵琶湖の最高の砂場で遊んでいて、私自身も心地よく子供と過ごせています。散歩にもよく行きますが、木の実を拾ってきてはままごとの材料にしたり、泥んこになって山をよじ登って遊んだり、花、鳥、虫、時にはシカやサルに遭遇したりと面白いです。山菜を採ったり家に飾る木の実を拾ったりと、自分のほうが夢中になってしまうくらい(笑)。京都の生活も大好きでしたが、今の暮らしの方が地に足がついている、そんな感じがします。

—–– これからやってみたいことはありますか?

ウメ:子供もアクティブになってきたので琵琶湖でキャンプをしたり、山歩きを始めたいです。畑で野菜を作ったり、薪を割ったり、体作りもしながらぼちぼち生活していけたらなあと思っています。

琵琶湖と山に囲まれた、ほどよい田舎

—–– 移住してからアキさんのものづくりに変化はありましたか?

アキ:今のところ大きな変化はありません。ここで家を建てる前から、田舎でものづくりをしている方たちが家族や仲間とどのように生活しているのか見聞きし、皆さんそれぞれ工夫しているのを知って、街中でも田舎でも楽しく暮らせることに変わりはないと考えていました。

ただ大阪や京都にいた頃に比べると、生活はガラリと変わりましたね。滋賀について詳しくなかったこともあり、移住してきた当初は今まで通っていた京都市内のお店まで足を運ぶことも多々ありました。医療機関や飲食店、仕事関係のお店もいろいろと新たに開拓して、少しずつ湖西での生活に慣れてきたところです。

—–– そんな湖西の魅力を伝えるとしたら?

アキ:湖西のなかでも特にこのあたりは市街化調整区域が多いので、公共交通機関も含めて急速な発展は難しいと思います。でも自然と関わって日々の生活にも比重を置いた暮らしをしたい方にはとても向いているエリアだと感じています。このエリアから京都市内まで1時間程度と近いので、田舎すぎないところもちょうどいいのかもしれません。

DIYを楽しんでいる方も非常に多く、いろんな方から知恵やご協力をいただけるのもありがたい環境です。琵琶湖と山しかない代わりに、それだけでとても豊かなので、仕事とのバランスを取りながらここでの生活を満喫していきたいですね。そして同世代のご夫婦や私たちと同じような移住者がこれからも増えてくれると嬉しいです。