「凝った料理はどこでも食べられるし、家でしている家庭のお惣菜を売りにできたらいいなと。だからメニューの数はとても少ないんです」。
メニューを決めた経緯を聞くと、『ほっとすていしょん比良』の代表を務める山川君江さんは、快活に笑いながら答えてくれた。
滋賀県大津市北比良のJR比良駅前にある『ほっとすていしょん比良』は、地元で作られたお米や味噌を中心に、惣菜やお弁当などの手作り商品の店頭販売と喫茶・飲食を提供している場所だ。
今回はカフェという業態にしてはラインナップが珍しいと感じたお昼ご飯に注目。
ランチで提供しているのは、三段重で出てくる「里山弁当」や、手作りのコロッケ4種類からふたつを選べる「コロッケ定食」、「大豆カレー」といったラインナップ。それぞれに誕生の物語があり、ここでは里山弁当を取り上げたい。
「たまたま大阪の道具屋筋へ行った時にこのお弁当箱を見つけたのがきっかけ。このお弁当箱なら、この位置にはこれ、ここにはこれと、私たちでも中身を考えられるし、風呂敷を開けた時の感動がいいよね」ということでメニューに加わったとか。
「家庭の味はちょっと甘い、ちょっと辛い、今日は水くさかったという変化があるから飽きない」。
そうお客さまに言われたことがあり、中身は季節によって変えることもあるようだが、メニューは変えずに営業を続けているそうだ。
背伸びをしないという姿勢は営業日の設定にも表れている。
『ほっとすていしょん比良』の営業日は水曜日と日曜日の2日。無理なく続けられることをとスタートし、ほとんどを手前味噌で行ってきたそう。内装も自分たちで行い、いろんな人たちに協力してもらってきた背景がある。
おそらく滋賀でコミュニティスペースの先駆けといえるだろう『ほっとすていしょん比良』。
道を聞きたくても駅の周りは畑ばかりでコンビニも何もない。そんな場所で地域貢献もできるかなという想い。そして自分達が作るお味噌汁の味を直接説明しながら、試食をしてもらうために商品販売から喫茶や飲食が始まった。今やお客さん同士の繋がりを生む蜘蛛の巣ネットワークをつくり、美味しさだけでなく、「この自然もすべて特産品だな」と山川さんが感じた比良山系と田園風景が広がっている。
今あるものを過度に見せない、ありのままの美味しさと自然を堪能できる「背伸びをしない比良」を、一度体感してもらいたい。
プロフィール
京都府宇治市の生まれ。約10年九州にいたが、Uターンで京都へ。普段は建築設計事務所で、広報・広告~総務と建築以外の仕事を担当。
代表が滋賀県旧志賀町を中心に地域づくりを行なっており、日頃の広報の勉強と湖西に行くきっかけをとローカルライター養成講座に参加。滋賀県は生まれた隣県だったのにも関わらず遊びに行った思い出が少なく、これを機に湖西を知り、楽しんで、その魅力を伝えられる手段が得られたらなと考えている。
頭の整理も何でもかんでも手書きのアナログ派。