未来に継承したい比良の味

  • ローカルライター ディーガン 美佐子

田園のなか一番眺めのよい席に座ると、雄大な比良山の山並みが正面にそびえ、息をのむ風景が見られる。幼かった子どもたちが、田んぼのあぜ道を駆けまわった思い出が、ふとよみがえってきた。この変わらない風景とおなじように、”ほっとすてぃしょん比良” のスタッフさんが笑顔で迎えてくれた。ここを訪れると、ホッと落ち着ける。

ふれあい なごみの場所として “ほっとすてぃしょん比良” は、北比良グループの米味噌を中心とした特産品販売所と、交流の場所として長年多くの県内外の人から愛されてきた。

 地域の食材にこだわった、手づくりの家庭の味が楽しめる里山弁当。風呂敷を開けるときの、わくわくする感覚はいまも変わらない。お馴染みの中身を見つけると、本当に嬉しくなる。 

生活改善グループが立ち上げた 北比良グループの味噌工場を引き継いだとき、女性の感性をいかして、食と農、地域を結びたいと、オープン以来ずっと

“ほっとすてぃしょん比良” は、地元とともに歩んできた。手づくり工房 比良の里 北比良グループ代表山川君江さんにお話を伺うことができた。

「最近は、比良のお母さんって呼ばれてるねん」と、言われる笑顔の山川さんの言葉を聞いて、思わずつられて笑顔でうなずいてしまった。長年地元の人たちに愛されてきた ”ほっとすてぃしょん比良”は、遠くから比良山を訪れる人びとには、玄関口であり心の拠り所になっている。

「もう私たちも若くないしね、次の世代へどう繋げていくべきか、思案している」。 このままいつまでも変わらずにいて欲しいと思うが、そのうち直面するであろう課題に、向き合いはじめていると知り、少しドキッとした。「多くの人に支えられて、今まで続けてこられた。先日も、パソコンが動かなくって困っている、ってSNSでつぶやいたら、それを見つけた誰かが手を差し伸べてくれて、ありがたいね‥」 

ここが人の繋がりで支えられた拠り所であり、橋渡しになってきた場所であることがよく分かる。「肩の力を抜いて、無理せずできることを続けてきた、ただそれだけよ」。「人々の心で支えられていることを、お客さんが教えてくれる。恩送りの繋がりを大切に、これからも受け継いでいきたい」と、話される山川さん。

地元産のお米で麹を作り大豆とともに手作りされた味噌、地元のもち米と小豆を使用した手作りおはぎ、大地の恵みを育んだ さつま芋ちっぷ、これらの加工品の品々には、地元をこよなく愛する想いと美味しさが、ギュッと詰まっている。

豊かな自然に育まれた比良の味は、丁寧に暮らす地域の人びとから、未来へ引き継がれていくことだろう。人の和によって支えられ、互いに助け合う結いの心を、ほっとすてぃしょん比良の山川さんに聞かせていただきました。

プロフィール
通訳/ ツアーコーディネーター/ 滋賀県近江環人21期生/ まんまるなないろの地球代表。自然豊かな湖西の地を子育ての場所に選び、在住して18年。窓から大きく広がる空と湖、比良山が一望できる豊かな環境をこよなく愛する。インバウンド通訳/ツアーコーディネーターとして、湖西地域地元の方々とのふれあいを大切にし、地域循環型で、持続可能な暮らしの大切さを紹介している。地域再生を本気で考え、実践へと繋がる学びを深めながら、食とエネルギーの地産地消を目指したローカリゼーション、Well-Being(皆が幸せに暮らせる)そんな未来のイメージを共有し、共感できる仲間を増やしたいと思っています。

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  • ディーガン美佐子
  • 写真:岡本 七海
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