2019年に湖西で誕生した、非営利の子どもラグビークラブ「アリゲーターズ」。前編でお届けした、生き生きと駆け回る(遊びまわる!)ちびっこたちの様子に、興味を持たれた親御さんも多いのではないでしょうか?
対象年齢は、幼児から小学6年生まで。練習のモットーは「ストレスフリーで、子どももおとなも楽しく」。練習日なら何時に来てもいいし、やりたい練習だけ参加して、あとは周りで遊んでいてもOKとのこと……! 一般的なラグビーのイメージとはずい分違う、自由なスタイルが魅力です。
なぜ、こんなにユニークチームで楽しそうなチームが生まれたのでしょう? 活動に秘められた想いとは? クラブチームを主宰する粟谷勇太さん(あわコーチ)、奥さまの千穂さん(ちほマネージャー)に、お話をお伺いしました。
リゲーターズの記事 前編はこちら。
運動能力がぐんぐん発達する“ゴールデンエイジ”を、楽しくサポート
ーー練習おつかれさまでした! 春風が心地よく、楽しく見学できました!早速ですが、お二人がチームを創設したきっかけを教えてください。
千穂:アリゲーターズは、2019年秋に創設しました。私たちの息子が7歳と4歳のときです。二人とも幼児期にいろんなスポーツの習いごとを体験させたのですが、ことごとくうまくいかなくて……。そのときの経験が、自分たちでチームをつくるきっかけになっています。
長男の場合は、(当時は)みんなと同じ列に並べなかったり、待ち時間にお友達とけんかになって、グラウンドの砂を投げたり……。練習の妨げになるわけにもいかないので、謝ってそそくさと連れ帰るような感じでした。次男もワンワン泣き叫んだり、やる気が日によって違ったり……。今思えば、子どもたちもストレスだったと思うのですが、親の私たちの根気も持たなくて。習いごとはあきらめるしかない、と思うようになっていたんです。
△「ちほマネージャー」の愛称で親しまれている千穂さん。子どもたちを温かく見守りながら、ご自身も全力で練習を楽しんでいるのが素敵。
勇太:とはいうものの、幼児期にのびのび体を動かす機会を持つことは、運動神経や身体能力の発達も左右します。それで「自分たちで、楽しく体を動かせる場所をつくろう!」と考えたのです。幼児の集中力にも配慮して、練習時間は短時間に。遊びも含めて、楽しいことだけをする場にしたいなあと。
千穂:「好きなだけ泣いていいんだよ」「何時に来てもいいし、先に帰ってもいいよ」「やりたい練習だけ参加してもいいんだよ」というモットーでね。遊びながら、自然に体を動かせる場を設けてあげれば、小学校に上がる頃にはバランスよく体を動かせるようになって、ちょうどいい「準備体操」になるかなと考えたんです。それで、夫が「ラグビーなら、自分たちで教えられるね」と。
△お二人の息子さんも、もちろんチームメンバー。小学3年生の兄、そうすけ君は、今では仲間にラグビーのお手本を見せられるくらいに成長! 弟のようじろう君(5歳)も、小さな体で元気に走り回っていました。
ーー“ストレスフリー”はお二人の実体験がもとになっていたのですね。勇太さんがおっしゃっていましたが、幼児期の運動は運動神経に影響するのですか?
勇太:科学上のデータも出ているんですよ。人の運動神経に関わる神経系型は、生まれてから6歳頃までに約80%まで成長し、12歳でほぼ100%に達します。そして、神経回路は一度発達すると消えることは滅多にありません。子どもの頃に覚えた自転車や水泳は、どんなにブランクがあっても忘れないでしょう?
だから、神経系の発達が100%に達するまでの4~12歳までの間(=ゴールデンエイジ)にいろいろな運動を体験させてあげて、神経回路に刺激を与えることは、運動能力の向上に大きく役立つというわけなんです。
千穂:昨年の夏には助成金を活用し、琵琶湖でSUP体験とビーチフラッグ大会を行いました。それはもう、大盛り上がりで! 今後もできるだけ、いろんな体験をさせてあげたいですね。
目指すは、スポーツ版子ども食堂!
△ある日のサプライズ。京都出身のラグビー日本代表 田中史朗選手からいただいたサインが、ミニ・マラソン大会の賞品に!
ーーアリゲーターズの参加費や月謝はどれくらいなのでしょうか。お稽古ごとは、道具も含めた費用がかさむのが気になるところで……。
勇太:アリゲーターズは非営利で運営しています。僕の本業は消防士で、コーチや運営はあくまでボランティアです。といっても、練習場を借りたり、ボールなどの道具代はかかるので、参加1回につき500円を目安にカンパをお願いしています。ただし、強制ではありません。それぞれご事情があると思うので、お支払いできる時に、お支払いできる方にご協力いただいています。
千穂:費用面でも「ストレスフリー」でありたいと思っています。草津に「げんこつおじさんのたこ焼き屋」さんという屋台があるのをご存知ですか? 週に1回、小学生は10円でたこ焼きが食べられるのですが、お金がない子どもたちも食べれるように、代金は「げんこつ箱」といって、握ったげんこつを箱の中に入れるしくみなんです。だから、お金を払っているかいないかは外から見たらわからない。誰もが気兼ねなく食べられるんです。
この活動がとても素敵だなあと思って。アリゲーターズも、スポーツ版こども食堂のような存在になれたらいいなと思っています。
ーーラグビーといえば、タックルなどのコンタクトプレーがあります。ケガについての心配はありませんか?
勇太:もちろん、子どもの成長に合わせた「安全なラグビー」を行うことを一番に考えています。日本ラグビー協会の指針でも、小学校2年生まではタックルを含めたすべての接触プレーが禁止されているんですよ。だから、低学年まではラグビーという競技にとらわれず、体をつかった「遊び」を中心にしたメニューにしています。
小学3年生以上には、ラグビーの技術や戦術を身につけられるメニューと考えていますが、創部早々にコロナ禍に直面したので、これからというところですね!
△勇太さんの本職は、消防局の救急救命士。チームでAEDも用意しているそうで、いざという時も心強い。
ラグビーをきっかけに、子どもの未来を応援したい
ーーチームのロゴマークのワニさんが、とてもカワイイです! でも、どこかで見たことがあるような……?
千穂:うふふ。和邇の平和堂に併設されている専門店街(アルタ)の公式キャラクターをお借りしています! 最高にチャーミングだし、地域で愛されるチームにしたいと思ってお願いに伺ったところ、無償で使用させていただけることになりました。
△アルタのワニのロゴをアレンジし、デザイナーさんと千穂さんがチームキャラクターを制作。これはカワイすぎます……!
ーーアリゲーターズは、おとな(保護者)のストレスフリーも大切にされているそうですが、どんな試みをされているのでしょうか。
千穂:保護者の方に、練習以外で当番をお願いすることは一切ありません。ストレスになるので、グループLINEすらやっていないんです。連絡はすべてInstagramで告知し、出欠の連絡も不要にしています!
もちろん当日その場で、道具の準備や見守りなどのサポートをお願いしています。これで十分ですし、皆さん温かくサポートくださるので、とても助かっています。
△練習について来たよちよち歩きのキッズたちも、お外時間を満喫中。見よう見まねのボール遊びも、さまになっています♪
ーーアリゲーターズの今後の目標を教えてください。
勇太:クラブで自由に使える(借りられる)芝生のホームグラウンドがほしいですね。芝生のグラウンドは数が少なく、競争率も高いんです。何か情報をお持ちの方がいらしたら、ぜひ教えていただきたいです。
千穂:これまで以上に、どんな環境にある子どもたちも気軽に、楽しく参加できる環境を整えていきたいですね。子どもたちに楽しんでもらうためには、関わっている私たち“おとな”も率先して楽しまないと!と思っています。遊びもスポーツも、人生も、全力で思い切り楽しんでいるおとなが近くにいたら、子どもたちをさらに元気づけたり、勇気づけることができると思うんですよね。
素敵なおとなの方たちも、どんどんチームに巻き込んでいきたいですね。
ーーここは学校でも家でもない、もうひとつの大切な居場所になりそう! アリゲーターズは、ラグビーを入り口に、子どもたちの未来を応援するプロジェクトでもあるのですね。
勇太&千穂:そうなんです! 「子どもは地域のたからもの」「子どものみらいをてらせ」も、私たちアリゲーターズの合言葉です。地域の子どもたちの可能性を引き出し、未来を大切に育てていきたいですね。
ーー(チームの合言葉をお借りして……)、今日はアリゲトーございました!!
アリゲーターズ ラグビーフットボールクラブ
Instagram:https://www.instagram.com/alligators_rugby/
*対象:幼児〜小学6年生まで(幼児クラス、小学生クラスで分けて練習することもあり)。
*練習場所:伊香立運動公園、伊香立小学校(芝生校庭)、朽木グリーンパーク 思い出の森など
*練習日:週末を中心に月1〜2回、2時間程度。日程・場所はInstagramでご確認ください。
*参加費:1回500円〜のカンパ制。その他の詳細はInstagramのハイライト画面でご確認ください。
問い合わせはInstagramよりメッセージをご送付ください。