比良の心の拠り所

  • ローカルライター 昇 晴香

大津市の北部、比良山系の麓、琵琶湖の近くにある、ほっとすていしょん比良。 

2004年に開業以来、比良地域で受け継がれるお味噌をはじめ、比良の山々の伏流水で育てられたお米や野菜を使った家庭の味を振舞われています。

比良山から吹く風が、お店裏の秋桜を揺らす昼下がり。

ほっとすていしょん比良の代表である山川さんに、お店と比良地域の魅力について伺いました。

「比良山系あたりに差し掛かると空気が変わる。比良の自然は特産品。これが比良の魅力やね。」

見上げれば青々とそびえる比良の山々、その裾野に広がる一面の田んぼ。どことなく聞こえて来る湧水の音。

漂う空気の清々しさに大きく息を吸いたくなります。

比良地域では古くから比良山の山すそに広がる丘陵地を利用して稲作が営まれてきました。昔はほとんど自給自足の生活だったため、農繁期は地域の人々が共同で作業を行い、お昼ご飯は公民館で炊き出しをして助け合っていたといいます。

そんな繋がりの元で、地域のお母さん方が受け継いできたのがお味噌。

△ほっとすていしょん比良で販売されている手作りの比良味噌

「特に皆さんに美味しい言うてもらえるのが『比良倍麹味噌』。大豆に対して麹が2倍の量やから、まろやかで食べやすいんよ」と山川さん。

他にも、毎日のお料理に使いやすい定番の比良味噌、比良地域のお正月に使われることからお正月味噌とも言われる比良倍麹白味噌など種類も豊富に販売されています。

「手前味噌言うくらいやから、人それぞれの好みがあるしね。比良味噌がいい言う人もいれば合わせ味噌にする人もいる。そうやって好みを見つけてもらえるのを身近で見られるのは嬉しいね。」

△ほっとすていしょん比良代表の山川さん

比良のお母さん方の家庭の味を、懐かしい、いつも変わらない味に安心すると地元の人にも喜んでもらえる。比良を訪れた人に、比良の自然の恵みを美しいと感動してもらえる。

それを直接感じることのできることがやりがいだという山川さんの笑顔は、訪れる人々を今日も優しく迎え入れています。

これからのお店と比良の未来一

印象的だったのは、山川さんが口にされた、「今できることを一生懸命がんばります」という言葉。

高齢者の方が増え、農業やお味噌の味など次の世代へどう引き継いでいくかを模索されている比良地域。それでも、山川さんは前を向きます。

「比良の自然、比良の味、比良全体の良さを次へ繋げていけるように、私たちがこれからその橋渡し役になるよう頑張ろう思てます」

若い人にすべてを任せるのではなく、今自分たちにできることを考え、行動に起こす。そうして比良地域をみんなで引き継いでいくことができれば…。

地元の人も、比良に住み始めた人も、訪れた人も、一緒に比良の未来を考える。

地域を次の世代へつなげていくということは地域全体が未来を見据えて行動することなのかもしれません。

お店を訪れると、まるで帰ってきたかのようにホッとする、ほっとすていしょん比良。

比良の味や自然を感じに訪れてみてください。

プロフィール
こんな雄大な自然が関西にあるのか…!と小学生の頃に読んだ里山の本をきっかけに、その自然に憧れて、地元大阪から新卒で高島市へ移住。住んでは湖西歴3年のまだまだひよっこ。
マイブームは散歩と、湖西線に乗って比良の山々、田んぼや琵琶湖の湖西の自然のグラデーションを眺めること。湖西線ほど様々な自然を一度に体感できる路線は他にはないのではないかと密かに思っている。好きな時間は早朝と夕方。滋賀県の朝焼けと夕焼けの美しさにいつも驚く。観光や行楽地という影に隠れた湖西本来の個性を伝えたい。滋賀出身ではない風の者として、風の視点なりの、風の便りを発信できるように力をつけることが目標。

  • この記事を書いた人
  •  
  • 文 :
  • 昇晴香
  • 写真:岡本 七海
  • 最近書いた記事
  •