おうちでヘアサロン。しごとも暮らしも自分のリズムで。

  • 自然派美容室kinomi ・市場知鶴さん
  • 市場瓦店・市場友貴さん ご家族

偶然出会った中古住宅がきっかけで、京都から和邇へ。今では一家揃って「和邇の大ファンになった」という市場さん一家。

ご自宅には、知鶴さんが営む自然派ヘアサロンを併設し、敷地の奥には瓦葺き職人である夫・友貴さんの工房も。お庭では3人のお子さんがにぎやかにかけ回り、野菜もすくすく育っています。

暮らし、しごと、遊びをゆるやかにつなぎながら過ごす一家のライフスタイルは、とても自然体で心地よさそう。そこには、サステナブルな地域、未来をはぐくむためのさまざまな楽しい工夫もこらされています。

住宅地に生まれた、居心地の良いサードプレイス

ーー市場さんのお宅は、奥さまが営む美容室を併設されているのですね。

知鶴:はい。私の独立のタイミングで、店舗併設を条件に物件を探し、6年前に京都から移住してきました。中古物件をリノベーションしていて、家の裏手には、屋根の瓦葺き職人である夫の倉庫も併設しているんですよ。

ーーそれぞれがご自宅をベースにお仕事をされているんですね。 どんなご縁で和邇に? 

友貴:僕は京都、妻は奈良出身ですので、ここを見つけたのは本当に偶然で。最初は京都市内で物件を探していたのですが、なかなか家賃や広さの折り合いがつかなくて……。そんなとき、結婚記念日で湖西のレストランを訪ねた帰りに、ここが売家になっているのを偶然見つけたんです。

ーーなんと運命的な出会い! 京都を離れる不安はなかったのですか?

友貴:まったくなかったですね。琵琶湖で泳いで、和邇川で小鮎を釣って、近所の山で子どもとカブトムシを捕りにいって……理想的な暮らしができる!と思いました。もし、自分も独立となれば倉庫がいるので、敷地が広いことも魅力でしたね(移住2年後に独立)。

知鶴:私の中では、ハワイに住んでいるイメージです!虹もたくさん見えるし、“遊びながら暮らす”感覚で過ごせるのが本当に幸せ。特に和邇浜はサイコーですね。ビーチぎりぎりまで車でいけて、トイレもある。仕事の合間に、水着をさっと着てぽちゃんと入って、帰ってきてまた仕事をしたり。ハンモックを吊るしてお昼寝も……。3人の子どもたちも、毎日あちこちを駆け回って遊んでいて、夢のような日々です!

ーー「kinomi」という美容室の店名には、どんな意味をこめたのですか。

知鶴:“着のみ着のまま”来店いただき、自宅にいる感覚でくつろいでほしいという思いを込めています。私が水や光になって、お客さまがすてきに実を結ぶお手伝いができればと思いました。

小さな子どもがいるママさんたちは、美容室に行く時間を作るのも大変です。家事や暮らしの合間にぱっと来てほっとできる、とまり木のような場所になれたら。ママさんだけではなく、アレルギーや病気をお持ちの方、うつの方など、長時間の外出に抵抗がある方にも、できるだけ希望に応えて寄り添いたいとも思っています。

ーー多様なひとを自然に迎えてくれるのがいいですね。お客さんにとってこのサロンは、もうひとつの家のような、お気に入りのカフェのような“心地いい居場所”になっているのでしょうね。

知鶴:私自身、子どもが小さい時は背負いながらカットしていましたし、美容室のありかたも働き方も、もっと多様でいいと思うんです。移住して大好きになった地域だから、さらに女性が生きやすい、暮らしやすい街になったら最高だなあ!と。

子連れ来店も、もちろんウェルカムですよ。1回 1000円で託児サービスもしています。ご依頼いただくと、近所のお母さんにアルバイトをお願いしているんです。ささやかですが雇用も生み出していけたらいいな。

△靴を脱いで上がる和室スペースもあり、子どもや家族の待合として大活躍。冬はこたつも。

ーー植物染料の「ヘナ」を使ったカラーリングも、こちらならではのメニューですよね。

知鶴:ヘナを扱うサロンはまだ少ないですね。ヘナは、インドのアーユルヴェーダで親しまれている薬草ハーブ。葉を乾燥させ、砕いた粉末で髪を染めます。100%自然素材なので、髪や体はもちろん、環境への負担も少ないんです。トリートメント効果もあるんですよ。私は長男を妊娠した際に、できるだけ化学物質の経皮吸収を避けたいと思い、取り入れるようになりました。自然なものは使っていて気持ちがいいし、このサロンは人にも、環境にもやさしい場でありたいと思っています。

夫婦それぞれのやり方で、サステナブルな街をつくりたい

ーー知鶴さんは、今やってみたいことはありますか?

知鶴:どうしよう、ありすぎちゃう……! お客さまと話していると、いろいろアイデアが浮かんでくるんです。たとえば、高齢のひとり身の方からは「作ったおかずが余ってしまう」などの話を聞きます。うちは逆に共働きで子どもも多いので、おかずがたくさんほしい。だから、ここで「おかずの買い取りサービス」ができたらいいなあとか。

それに、小学校から「体育の宿題」がでるのですが、せっかく環境がいいんだから、子どもたちが自然と遊び回りたくなるしくみを考えたらいいのに!とか(笑)。

△2020年のステイホーム期間に、友貴さんが子どもたちと一緒にセルフビルドで建てた小屋。日曜の朝から、全力で子どもたちが遊んでいました!

ーーたしかに(笑)。お店が地域コミュニティの“ハブ”になって、新しい試みが生まれていきそうですね。ご主人のお話もぜひお伺いしたいです。瓦葺き職人とのことですが、どんなお仕事をされているのでしょうか。

友貴:瓦とは、粘土を硬く焼きしめたもの。自然由来で、最後は土に還ります。この瓦で屋根を葺く職人として京都で12年修業し、2017年に独立しました。

瓦の初期コストは高いのですが、寿命は50年ほどあり、どの屋根材よりもロングライフ。それにエコなんですよ。屋根瓦と下地板の間の空気層が断熱層となり、夏は涼しく、冬は暖かく保ってくれるんです。室内環境でいえば、エアコンの効きもかなり違います。温暖湿潤な日本の気候に、一番適した屋根材なんですよ。

ーーなるほど、興味深いです。実は、お二人のお仕事のねっこは「サステナブル」というテーマでつながっていたのですね。

友貴:そうですね! 僕のライフワークは「ロングライフの家づくり」。20~30年でダメになる家を建ててしまうと、僕らの子どもの世代でゴミになってしまう。だから、再生可能な木や土壁、瓦などの自然素材や、修繕しながら長く住み継げる家づくりについて、同世代の職人たちと一緒に発信をはじめています。

△友貴さんが営む市場瓦店のウェブサイト。瓦屋根のいろはが、わかりやすく解説されています。

ーーところで、自営業はお忙しいと思いますが、お休みはとれていますか?

友貴:夫婦で相談し、日曜日は休みに決めました。以前は妻も店を開けていましたが、子どももまだ小さいですし、家族を一番に考えようと。働き方改革です!

知鶴:にぎやかな家族ですけれど、みんなそれぞれに悩んだり、大変だった時期もありました。そこで、気づいたのは「自分の幸せをいちばん大事にしよう」ということ。きっとそれが、いい方向に周りを巻き込んでいくと思うし、自分が満たされていなかったら、本当の意味で人にやさしくはできない。そう考えたら、とても楽になりましたね。

湖西産コンポストで、野菜も木々もすくすく成長中

ーーお庭では野菜がとても元気に育っていますね。

知鶴:私の母に教わりながら、長男(10歳)が率先して家庭菜園の面倒をみてくれています。育ちがいいのは、コンポスト(生ゴミからつくる堆肥)のおかげでもあるんですよ。移住時に植えたミモザとオリーブの木も、とても大きくなりました!

ーーご自身で堆肥を作っているのですか?

知鶴:いえいえ! 大津市北部では、民間企業が行政の支援を受けて、調理くずや残飯などを回収し、堆肥にして再配布してくれるんです。 街のあちこちに「生ゴミコンポスト」が設置されていて、とても便利。すばらしい取り組みですよね!

△市場家の近所の「生ゴミコンポスト」。ここに生ゴミを入れると定期的に回収され、代わりに堆肥化されたコンポストが提供される。

ーー 聞けば聞くほど、和邇は暮らしやすそうですね。

千鶴:いいですよ~。年配の方々も生き生きと釣りや畑を楽しまれているし、野菜もお米もおいしい! 滋賀が長寿県*なのもうなずけますよね。 

友貴:僕は、ご近所の天皇神社さんの氏子として、和邇祭でお神輿を担せてもらっています。消防団にも参加しています。昔ながらの町内ですが、移住組を温かく受け入れてくれるのがうれしいですね。外遊びが好きな子どもたちも、「ここは最高や!」というてます。

僕らが「湖西は楽しい~!」とあちこちで話しているので、そのうち知人がここに越してくるのではないかと……(笑)。これからも、家族でどんどん和邇の魅力を宣伝していきますよ!

*厚生労働省による2015年の調査(現時点の最新調査)で、滋賀県は男性の平均寿命 第1位、女性が第4位。

自然派美容室kinomi (知鶴さんの美容室)

instagram http://www.instagram.com/kinomi.info

WEBページ https://www.kinomi-hair.com

市場瓦店(友貴さんの屋根工事店)

instagramhttp://www.instagram.com/ichiba.kawaraten

WEBページ https://ichiba-kawara.com