梅仕事からセルフビルドまで、自分の手を動かして暮らしをつくる。

  • ねっこ自然農園
  • 加藤さん一家

手を動かして、暮らしをつくっていく。そう聞くと、なんだかハードルが高く聞こえるかもしれません。

そんな「つくること」に対して、背伸びしなくていいんだと教えてくれた夫婦がいます。田んぼと畑を手がける「ねっこ自然農園」の加藤大輔さんと、身体調整ヒーリング「ひらのはなれ」を営む真帆さんです。

それぞれ自分の仕事をしながら2人がつくっているのは、梅シロップに梅干し、味噌、醤油、さらには「家」まで!?

自然体で楽しみながら「つくること」と向き合っているおふたりに、自分の暮らしをつくる醍醐味を聞いてきました。

偶然が重なって暮らし始めた土地で

── 北比良に住むようになった経緯を教えてください。

△ 右が真帆さん、左が大輔さん

真帆:私は和邇出身なのですが、このあたりでよく山登りをしたり、学校の友だちが住んでいたり、もともと馴染みのあるエリアでした。両親はより自然の多い場所で余生を過ごしたいという思いがあり、北比良に土地を見つけていたんです。結局、北比良では身動きが取りにくいということで、私がプライベートサロンを始めさせてもらいました。

── どうしてここで、サロンを始めようと思ったのでしょうか?

真帆:私は和邇から京都や大阪に通っていた時期があって、楽しかったけれど、都会の空気が正直しんどかったんです。仕事がハードだったし、もともと田舎の空気に馴染みがありましたから。そういうハードな時期でも北比良に来ると、1日休んだだけで2日休んだ気分になれたんです。都会で頑張っているお客さんにも同じ感覚になってもらえるんじゃないかな、と思って始めました。

でもアクセスが良いとは言えないので、正直お客さんにここまで来てもらえるのか、当初は心配でした。もちろん初めて来ていただくハードルはありますが、お客さまに「この空気だけでも癒される」と言ってもらえるので、場所の効果は大きいなと思いますね。

── 大輔さんはどんな経緯で北比良に来たのでしょうか。

大輔:僕は地元が京都で、農業で独立するなら関西にしたいなと思って出合ったのが、滋賀でした。高島市の朽木(くつき)で空き家を紹介してもらい、同じ地区で田んぼも貸してもらえて、ほとんど自給自足の暮らしをしていたんです。この朽木に住んでいる期間に妻と知り合って、北比良に引っ越してきました。

── 引っ越した後も、同じ場所で田んぼを続けていらっしゃるんですか?

大輔:はい。北比良から通える距離なので、朽木にいた頃から畑を借りている高島市の鵜川(うかわ)に通っています。もう7年くらい、地域の方々と一緒に農業を続けさせてもらっています。

セルフビルドを通じて、「つくること」が身近になった

△ 真帆さんのサロン「ひらのはなれ」

── 真帆さんがサロンをやっている建物は、大輔さんが建てられたと聞きました。

真帆:そうなんです。プライベートサロンを始めたときは住むことを想定していなかったので、子どもが生まれて、自宅とサロンを兼用にするのが難しくなったんですよ。そしたら夫が「庭にスペースがあるから、サロンを建てようか」と言ってくれて、自宅とは別に、サロン専用の建物をセルフビルドで建ててくれました。

── 大輔さんにとっては、たとえ家であっても、つくることのハードルを感じなかったんですね。

大輔:農業を始めてから、なんでも「つくってみたい」と思うようになりましたから。周りの農家さんたちが田んぼや畑で使う道具をつくったり、機械が壊れたら自分で修理したりしているから、「自分でもできるやん」と。できるかどうか分からなくても、大工さんに頼む前に自分で手を動かしてみるのが楽しいです。

真帆:でも私は「自分でつくってみる」という発想がなかったので、最初はびっくりしましたね。プロに頼むものだと思って生きてきたので、「できるんか!?」という不安のほうが大きかったです(笑)。

大輔:今は家の増築をしていて、2年くらいかけて農業の合間にちょこちょこ進めています。

△ 写真の右奥に見える部屋が、大輔さんが増築した部分

真帆:少しずつできあがっていく期待と、「止まっているけれど大丈夫!?」という心配の両方を持ちながら、じっくりつくっている様子を見守るしかないです。そんな夫に私もだんだん影響を受けて、安易に買ってみる前に「これはつくってみようかな」と思えるようになりました。

あとは、つくるには時間が必要なので、待てるようになったんです。都会で仕事をしていたので北比良に来てからもせっかちさが残っていたのですが、そのリズムが変わっていきました。時間をかけて着実につくっていけば、ちゃんと完成するものなんだな、と夫に教えてもらったように思います。いつも二言目には、「つくればええやん」と言いますから(笑)。

「つくること」が身近な環境で子育てする

── 真帆さんは、何かつくっているものはありますか?

真帆:梅シロップと梅干しを毎年つくっています。小さい頃に祖母と一緒に暮らしていたので、梅仕事は身近な存在だったんです。ボディーワークの勉強を進めるなかで食べ物への興味も深まり、味噌もつくり始めました。

△ 真帆さんは毎年、梅仕事を続けている

真帆:あとは夫に出会ってから、醤油をつくることと、味噌を麹からつくることを聞いて。その話に私が食いついて、つくり方を教えてもらいました。今はほとんど夫にお任せしています。すごくおいしいんですよ。

大輔:醤油はときどきかき混ぜながら、1年くらい置いておくんです。麹づくりは子どもたちが好きみたいで、一緒に混ぜています。

── お子さんも「つくること」に興味を持っているんですね。

真帆:味噌や醤油をつくるワークショップを、自宅で毎年開催しているんです。我が子も毎回一緒に参加しているので、少しずつつくり方を覚えているみたいで。お客さんが小麦の炒り加減を迷っていたら「もうちょっとやな」「これはいいで」と指示を飛ばしていました(笑)。

△ 大輔さんの田んぼにて

真帆:あとは子どもたち、畑に行くのも大好きなんですよ。必ず夫にくっついて行きたがって、置いていかれたら大泣きするくらい。

大輔:一緒に行くと、虫を探したり僕の後ろをついてきて僕の真似をしたりしています。

── このエリアは、子育てにもすごく合う環境なのかもしれませんね。

真帆:なんでも遊びになるし、周りも寛容に接してくださり、たくさんの方と関わることができてありがたい環境です。お向かいさんが昼間に子どもを見てくださることがあって、この前も子どもたちがいつの間にかお向かいさんの家におやつを食べに行っていたみたいで(笑)。私は和邇でここまで自由に育っていないから、ときどきうらやましくなりますね。

── ご家族みんなで暮らしの楽しみをつくっていることが伝わってきます。お二人がこれからつくっていきたいものはありますか?

大輔:僕は、家の隣にある道具小屋をきれいにしていきたいです。今は簡易的なので、味噌や醤油の加工場にできるくらい、ちゃんとつくりこんでいきたいですね。

真帆:自分たちがつくった味噌や醤油を販売するために、どうやって商品化するのかも2人で考えています。

ねっこ自然農園

住所: 滋賀県大津市北比良
メールアドレス: neccofarm@gmail.com
公式サイト: ​​https://neccofarm.jimdofree.com/

ひらのはなれ

住所: 滋賀県大津市北比良
電話番号: 090-9115-1516
公式サイト: ​​https://hiranohanare.com/

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  • 文 :
  • 菊池 百合子
  • 写真 : 山崎純敬
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