人生の「優先順位」を見つける暮らしのつくり方。

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  • 干川さん一家

「仕事」と「暮らし」。

住む場所を決めるとき、どちらを優先しているでしょうか。意外と「仕事」優先で決めてきたかも、と感じる人も多いのでは……?

「家族がいちばん長い時間を過ごす家だから、生活を優先して住む場所を選びました」

そう考えて「仕事」よりも「暮らし」を優先し、湖西エリアに引っ越した人がいます。比良で理想の家を実現した、干川弦(ゆづる)さん・えりかさんです。

湖西に引っ越す前から浜大津で営んでいたパン屋の仕事を続けながら、自分たちで手を動かす暮らしを楽しんでいます。

何を大切にしたくて湖西に引っ越したのか。そして、暮らす場所を移すことで何が変わったのか。

ご自宅におじゃまして、湖西での暮らしで大切にしたいものを聞いてきました。

仕事よりも「生活」を大切にする、住む場所の選び方

△パン職人の弦さん

── お二人が滋賀に暮らし始めたのは、いつからですか?

弦:10年ほど前ですね。滋賀でパン屋をオープンしたときに、同じタイミングで住み始めました。

── なぜ滋賀を選ばれたのでしょうか。

弦:生まれ育った場所は滋賀ではなくて、僕は京都、妻が大阪出身なんです。

僕が独立してお店を出そうとしたとき、初めは京都で物件を探していました。でも京都はパン屋が多いので、滋賀も見に行って。たまたま行ったその日に見た物件がすごくよかったので、即決しました。それが今も続けている浜大津のお店です。

── 滋賀に住み始めた頃から、今のお家に住んでいたんですか?

弦:いえ、滋賀に引っ越して最初の5年は、お店の近くにあるマンションに住んでいました。でも浜大津に住み続けるイメージを持てていなかったので、娘が小学校にあがるタイミングで「せっかくなら家を建てようか」と。それで比良に来たんです。

△ログハウスのような、干川家の外観

── どうして比良を選んだんでしょうか。

弦:「田舎暮らしをしたい」よりも、「こんな家に住みたい」というイメージを持っていたからです。せっかく建てるなら、理想の家を実現したいなと。それなら、家にお金をかけるために土地の値段を抑えようと考えて、琵琶湖の西側を少しずつ北上しながら探していました。

そしたら、バイパスを下りたときの比良の景色が圧倒的に良かった。これはもう、比良で決まりだなと思って探したら、今住んでいる場所に出合いました。

── 迷わなかったんですね!

弦:もともと持っていた理想の家のイメージが木造の平屋で、窓を大きくしたかったので、広い土地が必要なんですよ。だから「田舎暮らしをしたい」とは思っていなかったですけど、結果的には、自然が豊かで土地を広く使えるこのエリアが合っていたんだと思います。

── 職場からの距離は意識していましたか?

弦:家からお店までは車で30分なのですが、家選びにおいて通勤時間は全く意識していませんでした。お店は将来的に移転してもいいと思っているので、お店よりも長い付き合いになる家の場所を仕事基準で選ぶのは、しっくりこなかったんです。

僕にとっての家は、家族がいちばん長い時間を過ごす場所。なので職場よりも、住みたい場所や理想の生活を優先して選びました。

「田舎暮らし」を始めたら、優先順位が明確になった

△えりかさん

── 比良に引っ越して、何か変化はありましたか?

えりか:優先順位が変わりましたね。自分の視点をずらせるようになって、何を大切にするかが変わってきたように思います。

たとえば大阪に住んでいた頃は、休みの日に予定がなくても梅田に行って、ウィンドウショッピングをして映画を観ていた。今思うと「なんであんなことをしていたんだろう」と不思議な気持ちになるんですけど、もう自動的に動いていたんです。今思えば、頭を使っていなかったのかもなって。

弦:ここに来てからは、何を大切にしたいかを考えるようになったよね。

比良でも、都会的な暮らし方ができる。でも田舎の暮らしに興味があったし、自然を大切にする生活スタイルのなかに、僕らが大切にしたいことがありそうだなと。それなら田舎の暮らし方を選ぼう、と二人で決めました。

たとえば薪ストーブを使うにしても、道具が必要になるし手間がかかるけれど、やりたくてやっています。経験したことがないことばかりですが、この生活を楽しんでいますね。

△干川家のリビングには、部屋全体を温めてくれる薪ストーブがある

── お二人は、どんなことを大切にしたいなと思っていますか?

弦:子どもがいるから、食と遊びですかね。比良に引っ越して自然との距離が近くなったことで、山にも琵琶湖にもしょっちゅう遊びに行っています。子どもたちと一緒にキャンプをする日が増えて、遊び方がかなり変わりました。

えりか:自分たちで「生活をつくっていく」ことを、大切にしたいですね。畑を貸してもらったり醤油づくりを教えてもらったりして、比良で出会った方と、物だけでなく情報も交換しています。自分がつくった野菜で料理をするのも、ずっとやってみたいなと思っていたので、楽しいです。

── 湖西でのつながりを、どうやって増やしていきましたか?

弦:滋賀に来る前からつながっていた友人と、たまたま湖西エリアで再会できたんですよ。おかげで人を紹介してもらったり、その友人が主催している琵琶湖の浜掃除「​Monday Beach Cleanup​」の活 動にも参加するようになったり。

えりか:声をかけてもらって「楽しそうだな」と思って参加するうちに、少しずつ知り合いが増えていきました。学校がない日は、子どもたちも参加しています。

子どもと一緒に「これ使えるかも」と拾って、家に持ち帰って机にしたりインテリアに使ったりする。宝探しをしながら、そのついでにゴミも拾う感覚です。

△庭で遊ぶ干川さんのお子さんたち

── すごく楽しそうですね。

えりか:そうなんですよ。だからこの子たち、ビーチクリーンの日じゃなくても、道にゴミが落ちていたら拾っていますよ。「あ、ゴミ落ちてる」って。

── 比良で人と関わっていくなかで、お子さんも含めて、ご家族で生活をつくっている感覚を共有しているのかもしれないですね。

弦:「自分たちで生活をつくっていこう」という意思を持っている人ばかりだから、何かをつくるにしても、それぞれのプロがいるんです。誰かに聞いたり頼んだりすれば、だいたいのことが解決するので、僕たちも自然と「自分たちでやってみよう」と思うようになりました。

えりか:田舎って閉鎖的で住みにくいという話を聞くこともありますけど、湖西ではそれぞれが大切にしたいものをお互いに尊重しているので、心地よく暮らせていますね。

弦:ここに移住してくる人は、大切にしたいことを持っている人が多いんじゃないかな。僕たちもさまざまな価値観を持つ人に出会い、「あ、こういうことを大切にできるんだ」と発見を繰り返すなかで、僕たちらしい優先順位が少しずつ明確になってきた気がします。

湖西での暮らしを、都会で生きる人に伝えていきたい

── 湖西に来て5年目、これからやってみたいことはありますか?

弦:自然と暮らしとの距離を、近づけていけたらいいですね。比良に引っ越してからすごく実感しているんですけど、自然と触れ合うと、気づきが多くて。荒れた森に入ったりコンポストを始めたりして、僕たちは自然のサイクルに組み込まれているんだな、と実感します。

とはいえ、ポイ捨て禁止の看板を浜に立てたり、子どもに「ゲームは禁止。自然のなかで遊びなさい」と伝えたりするような、否定や禁止のマインドにしたくないなと。むしろ、楽しく暮らすことを最優先にしたいですね。それくらいの気楽さがあれば、慣れないことがあっても楽しく続けていけるように思います。

湖西での暮らしを、都会で生きる人に伝えていきたい

── 湖西に来て5年目、これからやってみたいことはありますか?

弦:自然と暮らしとの距離を、近づけていけたらいいですね。比良に引っ越してからすごく実感しているんですけど、自然と触れ合うと、気づきが多くて。荒れた森に入ったりコンポストを始めたりして、僕たちは自然のサイクルに組み込まれているんだな、と実感します。

とはいえ、ポイ捨て禁止の看板を浜に立てたり、子どもに「ゲームは禁止。自然のなかで遊びなさい」と伝えたりするような、否定や禁止のマインドにしたくないなと。むしろ、楽しく暮らすことを最優先にしたいですね。それくらいの気楽さがあれば、慣れないことがあっても楽しく続けていけるように思います。

Bakery Dry River(ベーカリー・ドライリバー)

住所: ​滋賀県大津市逢坂2-9
電話番号: ​077-572-9822
公式サイト: ​https://www.facebook.com/pages/Bakery-Dry-River/374736952619400

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  • 文 :
  • 菊池 百合子
  • 写真 : 山崎純敬
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